研究生活は挑戦の連続です。特に、博士課程は長期にわたる困難な道のりとなります。私自身、博士課程で様々な壁にぶつかり、何度も挫折しそうになった経験があります。しかし、適切なマインドセットを身につけることで、この挑戦を楽しみながら乗り越えることができます。
本記事では、研究生活をハッピーに過ごすためのマインドセットについて、自己分析と研究推進の2つの観点から解説します。
なお、研究を推進していくための具体的なスキルに関しては、下記の記事で詳しく解説しています。

1. 自分を見失わないためのマインドセット
自己分析の重要性
【失敗例】研究テーマの方向性に確信が持てず、毎日モヤモヤした気持ちを抱えながら実験を続けていた。結果、研究効率が著しく低下し、貴重な時間を無駄にしてしまった。
「自分の研究に意味があるのか」「このまま続けていけるのか」など、時に自分の進路や能力に不安を感じることがあります。そんな時こそ、自己分析が重要です。自分自身を深く見つめ直すことで、研究者としての軸を固めることができます。以下の3つの観点から自己分析を行うことが重要です:
- 自分の研究の学術的位置づけ:どんな新規性があるのか?何を目指しているのか?
- 社会的な貢献の方向性:この研究が実現すれば、世の中はどう変わるのか?
- 大切にしたい価値観や信念:自分が本当に打ち込めることは何か?
これらを明確にすることで、「自分は何者なのか」という問いに答えを見出すことができます。研究者としての独自性を育て、自分だけの「牙」を磨くことにつながります。「自分は何者なのか」という問いに答えを見出すことができます。研究者としての独自性を育て、自分だけの「牙」を磨くことにつながります。
マイノリティであることを楽しむ
【失敗例】 私の友人は、自分の研究テーマが主流から外れていることに悩み、周囲の目を気にして研究の方向性を変えてしまった。結果、本来の興味を失い、モチベーションが低下してしまった。
研究者の世界には安定や平穏はありません。しかし、それを変化の余白ととらえ、マイノリティであることを楽しむマインドを持つことが大切です。予測不可能な部分をポジティブに捉え、新しい発見の機会と考えましょう。
外部からの刺激を積極的に取り入れる
【失敗例】研究室に籠りきりになり、同じような考えばかりで行き詰まっていた時期があった。その後、異分野の研究者との交流を始めたことで、新しい視点を得られ、研究が大きく進展した。
井の中の蛙にならないよう、積極的に外部からの刺激を取り入れることが重要です。学会参加や他分野の研究者との交流を通じて、自分の立ち位置を客観的に把握し、成長の機会を見出しましょう。また、普段やらないことに挑戦したり、新しい環境に身を置いたりすることで、意図的に変化を作り出すことも効果的です。
例えば、以下のような機会を積極的に活用することで新しい視点や発想を手に入れ、自分の研究に対する新たなアプローチを見出すことができる可能性があります:
・国内外の学会への参加と同世代学生との交流
・異分野の研究者とのランチミーティング
2. 研究をうまく進めるためのマインドセット
「まずやってみる」の精神
【失敗例】 博士課程1年目、私は完璧な実験計画を立てようと何ヶ月も費やし、結局その間まったく実験が進まなかった。
研究の進捗が大幅に遅れてしまうだけでなく、「スーパースキームを考えたぞ!」と喜んだのもつかの間、実験をやってみると全然予想もしなかった結果になることのほうが多いです。
研究では、下調べに時間をかけすぎて行動に移せないことがあります。しかし、完璧を求めすぎると前に進めません。適度な楽観主義と「勘違い」の精神で、思い切りよく行動することが大切です。石橋を叩いて渡るよりも、まずは渡ってみる。うまく渡れたらラッキー、という発想が研究には必要です。失敗を恐れるのではなく、予想外の結果を面白いと捉える姿勢が重要です。
・小さな実験から始めて、徐々にスケールアップする
・予想外の結果を「失敗」ではなく「発見」と捉える
手を動かすことの重要性
研究はアイデアだけでは進みません。必ず手を動かす必要があります。未解決問題に取り組む研究では、やってみなければわからないことがほとんどです。「ひょっとすれば解けるかも」というレベルの問題に挑戦し続けることが、研究の醍醐味です。
がむしゃらさの価値
失敗例: ある研究プロジェクトで、私たちは綿密な計画を立てすぎたあまり、柔軟性を失ってしまいました。予想外の結果が出たときに対応できず、貴重な発見の機会を逃してしまったのです。
計算づくでアプローチするよりも、時にはがむしゃらに取り組んだ方が道が開けることもあります。直感や勘を大切にし、予想外の発見につながる可能性を常に意識しましょう。
2.4 直感を大切にする
【失敗例】「こんな単純なアイデアはダメだろう」と思い込み、面白い研究の種を見逃していた。後で他の研究者が同様のアプローチで成果を上げているのを見て後悔した。
研究では、論理的思考と同時に「なんとなくおかしい」と感じる直感、「これは面白い」というワクワク感、「ひょっとしたら」という好奇心、などが新たな発見につながることが多々あります。
まとめ:充実した研究生活のために
博士課程は確かに長く困難な道のりですが、適切なマインドセットを持つことで、充実した研究生活を送ることができます。自己分析を通じて自分の軸を固め、外部からの刺激を積極的に取り入れることで、研究者としての成長を加速させることができます。また、研究を進める上では、完璧主義に陥らず、適度な楽観主義と行動力を持つことが重要です。失敗を恐れず、予想外の結果を楽しむ姿勢が、新たな発見につながります。
研究生活はQOL(Quality of Life)の向上と自己実現の機会でもあります。自分の情熱を大切にし、研究を通じて自分自身を深く理解していく過程を楽しんでください。困難に直面しても諦めない強い意志と、自分で重要な決断を下す力を養うことで、博士課程を乗り越え、研究者としての道を切り開いていけるはずです。
最後に、研究生活を楽しむための具体的なアドバイスをいくつか紹介します:
- 小さな成功を祝う習慣をつけましょう。実験がうまくいった日や論文が受理された日は、自分へのご褒美の時間を設けましょう。
- 研究仲間とのコミュニケーションを大切にしましょう。困難を共有し、互いに励まし合うことで、モチベーションを維持できます。
- 研究以外の趣味や活動も大切にしましょう。バランスの取れた生活は、研究のパフォーマンス向上にもつながります。
- 定期的に自分の研究の意義を再確認しましょう。社会にどのような影響を与えられるのか、大きな視点で考えることで、モチベーションを高められます。
研究の道のりは決して平坦ではありませんが、これらのマインドセットを意識することで、より充実した研究生活を送ることができるはずです。皆さんも、自分なりの研究スタイルを確立し、研究を楽しむ心を忘れずに進んでいってください。