書けない原因から紐解く!理系大学生のための論文執筆実践ガイド

学生向け
学生向け

論文執筆は多くの理系大学生にとって大きな挑戦です。この記事にたどり着いたあなたは、なぜ自分は論文が書けないのか、もしくは何から始めてよいかわからず困り果てていることでしょう。しかし、効果的なアプローチを知ることで、この過程をより効率的かつ成功裏に進めることができます。

この記事の前半で論文が書けない理由を明らかにするとともに(原因編)、後半では論文を完成させるための実践的なアプローチ(対策編)を詳しく紹介していきます。

原因編:論文が書けない理由

執筆初期の問題

1.ストーリーが描けていない

多くの学生が直面する最初の壁は、論文で何を書けばいいかわからないという問題です。これは主に、研究のモチベーションや背景があいまいであることに起因します。自分の研究が何を明らかにし、どのような知識の隙間を埋めるのか、社会にどう貢献するのかが不明確な場合、論文を書き始めることすら困難になります。

2.書き方がわからない

指導教員から論文を書くよう指示されても、具体的な書き方がわからず立ち往生してしまうケースも少なくありません。特に、身近に書き方を教えてくれる先輩や友人がいない場合、この問題は深刻化します。

3.やる気の問題

論文執筆への重圧を感じながらも、なかなか作業に着手できないという状況も多く見られます。特に、将来研究職以外を考えている学生にとっては、論文を書くメリットが見出せず、優先順位が低くなりがちです。

4.英語のハードル

国際ジャーナルへの投稿を目指す場合、英語での執筆が大きな障壁となります。しかし、この問題は思うほど深刻ではありません。初めは翻訳ツールを活用し、英語校閲サービスを利用することで、このハードルは徐々に下がっていきます。

5.論文構造の理解不足

論文の基本的な構成や、何をもって完成とするかが理解できていないケースもあります。これは特に、論文をあまり読んだことがない学部生や大学院生に多く見られる問題です。

執筆中期の問題

完成しない論文

執筆を始めてから数カ月経過しても完成しない場合、以下のような問題が考えられます:

  • データを単に羅列し、結果間のつながりやストーリーが不明確
  • ディスカッションが不十分
  • 論文の構造が理解できていない
  • 完璧主義により、常に「足りないデータがある」と感じてしまう

執筆後期・投稿前の問題

1.自信の欠如

大体書き上げたものの、自信が持てないという問題もよく見られます。これは往々にして完璧主義的な考え方から生じます。

2.推敲に時間がかかる

ディスカッションの深化や英語表現の改善に時間がかかり、なかなか完成に至らないケースもあります。

3.投稿の障壁

適切なジャーナルの選択や、投稿に必要な書類(カバーレター、補助データ、グラフィックアブストラクトなど)の準備に躊躇し、投稿が先延ばしになることもあります。

対策編:論文を書くためのアプローチ

執筆前の準備

1.研究の目的を明確にする

まず、自分の研究が何を明らかにするのか、どのような社会的意義があるのかを明確にしましょう。これにより、論文のストーリーが自然と浮かび上がってきます。

2.論文の構造を学ぶ

良質な論文を数多く読み、その構造を理解することが重要です。特に、自分の研究分野の論文を集中的に読むことで、論文の書き方や構成のコツを掴むことができます。

3.執筆計画を立てる

論文は一気に書き上げるものではありません。毎日30分など、短時間でも継続的に取り組む習慣をつけましょう。ただし、あまり長期間かけすぎると内容を忘れてしまい効率が悪くなります。2~3か月(遅くとも半年)以内を目安に完成させることを目指しましょう。

執筆中の対策

1.結論から考えよう!

まず、最も重要なポイントは「結論から考える」ことです。多くの学生は序論から書き始めがちですが、これは非常に非効率的です。代わりに、自分の研究で何を主張したいのかを明確にし、そこから逆算して論文を組み立てていきます。

例えば、新しい触媒材料の開発に成功した場合、「材料AはB反応において従来の材料よりC倍効率的である」という結論を最初に設定します。この結論を念頭に置きながら、論文全体の構成を考えていきます。

2.重要結果(根拠)の特定及びアウトラインの作成

次に、その結論を導き出すために重要な結果(根拠)を特定します。上記の例では、材料AとB反応の詳細なデータ、従来の触媒との比較実験の結果などが該当するでしょう。これらの核となる結果を中心に論文を構築していきます。

文章を書き始める前に、論文に使用する図を完成させることも重要です。図は研究の核心を視覚的に表現するものであり、これを先に作成することで論文の骨格が明確になります。

3.結果・考察セクションの作成

結果・考察セクションの作成では、日本語で論理の流れを整理しながら進めます。単に結果を羅列するのではなく、結果同士の関連性を明確にすることが重要です。また、結果は単に「反応条件Dを変えた場合、Eが大きく増加した」と定性的・主観的に表現するのではなく、「DをXXX変えた際、EはYYY(ZZZ倍)増加した」と具体的数値を用いて定量的・客観的に説明する必要があります。

さらに、実験セクションでは読者が実験を再現できるよう原料情報や合成・評価手法について漏れなく記述するのを忘れないでください。

4.イントロダクションの一工夫

イントロダクション(研究背景)は、設定した結論から逆算して書きます。自分の主張に必要な予備知識や周辺の最新動向を漏れなくカバーします。例えば、材料開発の歴史、現在の課題、最新の研究動向などを簡潔にまとめます。これにより、読者を自然に自分の研究の重要性へと導くことができます。

5.アブストラクトの作成

論文のアブストラクトは研究の要約であり、読者の興味を引く重要な部分です。背景、目的、実験手法、結果・考察、結論はすべて漏れなく盛り込む必要があります。

背景:研究の重要性を簡潔に述べる
目的:研究の具体的な目標を明確に示す
方法:主要な実験手法や分析方法を簡単に説明する
結果:最も重要な発見や数値を示す
結論:研究の学術的意義・社会的インパクトを述べる

字数制限を守りつつ、研究の本質を伝えることが重要です。

6.推敲及び英語への変換

初稿が完成したら、論理的な破綻がないか、指導教員や同僚からフィードバックを受けてください。自分では気づかなかった問題点や改善点を早期に発見できます。その後、ブラッシュアップを続け、論理的な飛躍や破綻がないか読者の気持ちになって何度も読み直してください。

最後に、完成した日本語の原稿を英語に変換します。最初から英語で論理の破綻なく執筆するのはネイティブでもない限り相当な鍛錬を必要とします。日本語で論理が通っていれば、英語への変換はそれほど困難ではありません。また、初稿は母国語で書き、その後翻訳ツールを活用して英語に直すという方法は非常に効果的です。英語表現に過度にこだわらず、まずは内容を固めることに集中しましょう。

投稿準備と査読対応

1.適切なジャーナルの選択

自分の研究内容に最適なジャーナルを選ぶために、関連分野の論文がどのジャーナルに掲載されているかを調査しましょう。また、ジャーナルのインパクトファクターや査読期間なども考慮に入れます。

2.投稿書類の準備

カバーレターや補助データなど、投稿に必要な書類の準備を計画的に進めましょう。これらの書類も論文本体と同様に重要です。

3.査読コメントへの対応

査読者のコメントに対しては、丁寧かつ論理的に回答することが重要です。コメントを一つ一つ慎重に検討し、必要に応じて論文を修正しましょう。

常日頃から意識すべきこと

  1. 最新の研究動向をフォローする:定期的に関連分野の論文を読み、自分の研究の位置づけを常に意識しましょう。
  2. 研究ノートを取る習慣をつける:日々の実験や考察を細かく記録することで、論文執筆時のデータ整理が容易になります。
  3. 研究ディスカッションに積極的に参加する:セミナーや学会に参加し、他の研究者と意見交換することで、自分の研究の新たな視点や改善点を見出すことができます。
  4. 批判的思考力を養う:他者の研究を批判的に読むことで、自身の研究の課題を見つけ、改善する力が身につきます。
  5. タイムマネジメント・タスク管理能力を磨く:研究と論文執筆のバランスを取るために、効率的な時間管理が不可欠です。

まとめ

論文執筆は確かに困難な作業ですが、これらの原因を理解し、適切な対策を講じることで、誰でも上達することができます。

このアプローチを実践することで、論理的で説得力のある論文を効率的に執筆することができます。結論から逆算して構成を組み立て、視覚的な要素を重視し、論理の流れを常に意識することが成功の鍵となります。

重要なのは、完璧を求めすぎず、継続的に取り組む姿勢です。

論文執筆は決して容易な作業ではありませんが、このような戦略的なアプローチを取ることで、必ず論文を完成させ、より効果的に自分の研究成果を世界に発信することができるはずです。

error: