6秒で研究生活が変わる?理系大学生のための感情コントロール術

学生向け
学生向け

はじめに

アンガーマネジメントは、研究者や学生にとって非常に重要なスキルです。ストレスの多い研究環境において、怒りや苛立ちをコントロールする能力は、生産性の向上や人間関係の改善につながります。以下、アンガーマネジメントについて詳しく解説していきます。

アンガーマネジメントとは

アンガーマネジメントとは、怒りや苛立ちといった感情を適切に管理、コントロールする方法です。1970年代にアメリカで始まったこの心理教育は、日本でも教育やビジネスの分野で広がりを見せています。
研究室での人間関係のトラブルや、ゼミでの厳しい指導など、学術環境には様々なストレス要因があります。しかし、これは学生だけの問題ではありません。最近では、ある国立大学の准教授が研究棟のドアを破壊し逮捕されるという事件も起きています。

人はなぜ怒るのか?怒りのメカニズム

人が怒る理由とそのメカニズムは、脳の構造から説明できます。脳は大きく「大脳新皮質」「大脳辺縁系」「脳幹」の3つの部分で構成されています。怒りの感情は、動物の本能的な行動や感情を司る「大脳辺縁系」で発生します。一方、この感情をコントロールするのが、理性的な判断や論理的思考を担当する「大脳新皮質」の「前頭葉」です。

怒りは生存に必要な感情であるため、その発生自体を防ぐことは困難です。しかし、前頭葉が怒りの感情をコントロールする役割を果たしています。ただし、突発的な怒りに対しては、前頭葉がすぐに対応できません。前頭葉が本格的に働き始めるまでには3~5秒程度かかるとされています。

したがって、怒りをコントロールするためには、この時間的なズレを利用し、「少し我慢する」ことが重要なポイントとなります。怒りを感じた際に、ほんの数秒間待つことで、理性的な判断が可能になり、感情的な行動を抑制できる可能性が高まります。

アンガーマネジメントの重要性

アンガーマネジメントを習得することで、以下のようなメリットがあります:

  1. ストレスの減少
  2. パワハラ防止
  3. 仕事の生産性向上
  4. 教育や指導の質の向上
  5. 感情表現の改善
  6. コミュニケーションの円滑化
  7. モチベーションの向上
  8. 柔軟性と視野の拡大

怒りやすい性格タイプ

自分や周囲の人の性格を理解することは、アンガーマネジメントの第一歩です。以下のような性格タイプは、怒りを感じやすい傾向があります

性格1.正義感で筋を通すタイプ

間違ったことをしている人に対しては、その人が偉かろうと白黒はっきりつけたほうがいい!と思う半沢直樹タイプ。正義感が強く、曲がったことや筋が通っていないことが許せなかったり、常に正そうとしたりして、介入しすぎるところがあります。非常にご立派なのですが同時に敵も作りやすく、自分に不利になる状況が発生することも。

性格2.向上心高めで完璧主義者

自分にも周りにも厳しくなってしまう傾向にあり。こうあるべきだ、こうすべきだということを常に考え自分を高めていけること自体はよいのですが、自分の理想と現実との乖離に大きくストレスを感じやすく落ち込んだりやる気がなくなってしまったりとネガティブに作用する可能性もあります。一方で、優柔不断な人、適当に考えたり行動したりする人がいるとイライラしてストレスを溜めやすい。人は人、自分は自分という折り合いをつけたほうがいいかも。

性格3.自尊心が非常に高いタイプ

いつも周りからどう見られているかが気になるタイプで、他者からの承認欲求が強いとも言えます。周りに褒められたり評価されたりすると非常に活力にできるものの、ネガティブな評価や扱いを受ける・自分の思い通りにならないという状況が発生するとイライラや不満を抱えやすいという諸刃の剣。

性格4.”自称”サバサバ系

自分の考えや感情を素直にストレートに表現することができるので、意思表示がはっきりできない人や思う通りに行動できない人が周りにいるとイライラする傾向にある。自立心が強く、自由に動きたいタイプなので、行動を制限されるとストレスを感じやすい。ただ、正論は時に人を傷つけるのでご注意を。

性格5.外柔内剛タイプ

一見穏やかでやさしそうだが、心の中は何事にも左右されない強い意志をもっている外柔内剛タイプ。自分の意見や意志を重んじるため、合わない意見や価値観には目を向けない傾向にあり。内側に我慢やストレスを溜めやすいという特徴があり、度が過ぎると体調を崩すことも。

性格6.慎重派で神経質なタイプ

周りに対する警戒心が強いので自分のプライベートゾーンに入り込まれると、ストレスや怒りを感じやすい傾向がある。人間関係自体にストレスを感じやすく、自分についても周りの人のことについても固定観念をもちやすいのが特徴。非常に感受性が強く敏感な気質もった人で、「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」という言葉が最近よく使われるようになりました。統計的には人口の15%~20%。5人に1人があてはまる『性質』です。

【怒りゲージ】怒りの感情の種類を知ろう

「怒り」自体が生物学的にみてネガティブな感情ではないことはわかりました。怒るべき時に抑えることは、人として不健康ともいえることなのです。しかし、怒りには様々なレベルがあり、それぞれに適切な対処が必要です:

レベル1:「イラッ」頻度の高い怒り

日頃のちょっとしたことに過敏に反応して頻繁に出る怒りです。頻度が高いほど、イライラなどの不快感を抱える時間が多いということになります。

例1)電車が少し遅れただけで不機嫌になる
例2)後輩が少しでも業務のミスをすると、すぐに苛立ちを感じる

レベル2:「イライラ・・・」後からジワジワくる持続性のある怒り

過去の怒りを引きずってしまったり、何度も思い出したりする怒りです。すでに終わったことなのに、自分を何度も苦しめる怒りといえます。

例1)指導教員からの厳しい指摘を数日間引きずり、研究に集中できない
例2)研究室の仲間との些細な口論を何度も思い出し、数週間後も気分が落ち込む

レベル3:「カーッ!!」頭に血が上ってしまう強度が高い怒り(怒り80%)

怒りがあからさまに表情に出たり、言葉遣いがかなり荒くなってしまったりします。アクセルを全開で踏んでいるイメージ。メーターが振り切って歯止めが効かないような怒りに突入してしまうすれすれの状態です。ここで理性が働かないと次のステージへ一気に進んでしまいます。

例1)交通渋滞で予定に遅れそうになり、他の運転手に対して大声で罵声を浴びせる
例2)実験結果が思わしくなく、研究室の機器を乱暴に扱ってしまう

レベル4:制御不能。癇癪を起してしまいもう手が付けられない怒り(怒り120%!!)

相手やモノに怒りが向かい、投げたり蹴飛ばしたりする傾向がある怒りです。そういう状態になると実は怒っている本人もどう事態を収拾すればよいかわからなくなっていたりします。良好な人間関係が築きにくくなるどころか、パワハラ・モラハラ発言だけでなく、器物破損や傷害などが明るみになると自分の社会的立場を追われることになります。

例1)ゼミ中に意見が通らず、突然机を叩いて資料を床に投げ散らかして退出する
例2)家族との口論がエスカレートし、家具を蹴飛ばしたり壁に穴を開けたりする

アンガーマネジメントの実践方法

アンガーマネジメントを実践するには、以下の4つの観点が重要です:

  1. 【マインドを変える】自分の許容範囲を広げる
  2. 【予想する】怒りを引き起こす状況を事前に想定する
  3. 【衝動を回避する】6秒ルールを実践する
  4. 【行動する】怒る以外の解決方法を探す

6秒ルールの実践方法

怒りを感じた瞬間、以下のような方法で6秒間を乗り切ることができます:

  • 実際に数字をカウントして待つ
  • 相手の言葉を聞き返す、繰り返す
  • 「はい・・・」「そうですね・・・」と適当な返事をして受け流す
  • 深呼吸する
  • 全く違うことを考える
  • 怒りが爆発した場合のシミュレーションをする

状況によっては、席を外す、水やお茶を飲む、窓を開けて空気を入れ替えるなどの方法も効果的です。

まとめ

アンガーマネジメントは、研究者や学生が健全な研究環境を維持し、生産性を向上させるために不可欠なスキルです。怒りのメカニズムを理解し、適切な対処法を身につけることで、ストレスの多い学術環境でも冷静に対応できるようになります。

自分の怒りの傾向を知り、6秒ルールなどの具体的な技術を実践することで、より良いコミュニケーションと研究成果につながるでしょう。アンガーマネジメントは、単に怒りを抑えるだけでなく、感情をより適切に表現し、建設的な問題解決を図る能力を養うものです。これらのスキルは、研究生活だけでなく、将来のキャリアにおいても大いに役立つことでしょう。

error: